バイオファンが引き起こす流れの理論

水中に形成される流管の形状

 水底の水を水面に引上げるのにパイプは要らない。バイオファンを水面に浮かべて回すだけで、水中には目に見えない富士山の形をした流管が形成される。水底の水はこの流管の内部を導かれて上昇を続ける。流管の壁を通して外部に流出することはない。また、流管の外部の水が内部に流入することもない。水底を流れて集束した水は、流管の内側を、頂上を目指して上昇し、水面に広がって循環をくり返す。

水中に形成される流管の形状

 バイオファンが起こす流れを理論的に解析すると、水中に形成される流管の高さと広がりは、水掻き羽根の長さ Rに比例していることが分かる。上図は、水掻き羽根の長さの8倍の水深の所にバイオファンを浮かべたときに形成される流管の形状である。
 例えば、出力が90Wのバイオファンの水掻き羽根の長さは1.9mで、これの8倍は15.2mである。したがって、上図は、15.2mの水深の所に、90Wのバイオファンを浮かべたときに形成される流管の形状を表わしていることになる。このとき、流管の裾野は、1.9mの12倍、つまり、22.8mの所まで広がっていることも図から読み取ることができる。
 図のような流管が形成されるには、二つの条件が満たされていなければいけない。
 (I)水温や塩分濃度が一様であること
 (II)流れは渦なしであること
したがって、水深方向に、水温が低くなっていく場合と、塩分濃度が高くなっていく場合は、深くなるにつれて水が重くなるので、図のような流管は形成されない。このような場合は、温度成層解消条件を考慮して、流れを扱う必要がある。が、表層の水温が底層のそれより低くなる、8月中旬から翌年の2月中旬頃までの期聞は、図のような流管に沿う形で、水底の水が上昇を続けると考えても問題は無い。
 図は、Rの8倍で流管を描いてあるが、これは一例で、Rの20倍でも、何倍でも富士山のような流管を描くことができる。したがって、表層の水温が低い場合は、流れはどこまでも及ぶことになる。流れが及ぶ水深に限界は無い。
 しかし、水底をはうように移動する流れには限界がある。水底には境界層が形成されているので、渦なしの(II)の条件は満たされていない。そのため、水底の流れがどこまで及んでいるかを解析するには、水の粘性を考慮した、流れが及ぶ範囲の解析の理論によらねばならない。