バイオファンが引き起こす流れの理論

境界層の拡散促進作用の解析

境界層の拡散促進作用の解析

 バイオファンを回すと、水底をはうように流れて、遠方から、バイオファンの所に集束する流れが生じる。流れは水底に平行に層をなして流れる層流である。上の図は、この層流を、流れる方向に描いた6本の流線で表わしたものである。
 Pの位置での流速を、それぞれの流線について調べてみる。先ず、底泥の表面に接触している水は、強い粘性力を底泥から受けているので、流れていない。流速はゼロなので矢印は描いていない。が、底泥から少し離れた流線1に沿って流れる水の流速は、粘性力に勝って、少し速く流れている。それを、流れる方向(流線の方向)に、短い赤い矢で表わした。もっと離れた流線3に添って流れる水は、流線2のそれより受ける粘性力が小さくなるので、流速がより速くなる。そのため、図には、より長い赤い矢で描いてある。
 流線4、5、6のように、水底からある程度離れると、粘性力が及ばなくなるので、流速は変化しない。が、流線1、2、3に沿って流れる水の流速は、水底から離れて、受ける粘性力が小さくなるにつれて、次第に速くなっていく。この、水底から離れるにつれて流速が変化する流れの層は、境界層といわれている。
 問題はこの境界層である。境界層内部の水の微小粒子は、全て回転していて、その角速度は(1/2)rotuで表わされる。uは、水の微小粒子の流れの速度である。
 境界層内部では、これら無数の微小粒子の回転が重なり合っている。そのため、境界層内部に考えた、あらゆる部分は一つの回転体と見なすことができる。流線1と3の所に、 ABCDとabcdに図まれた部分を考えると、それぞれは、矢印の方向(時計方向)に回転していると見なせるので、この回転によって、流線3に沿って流れる水は、AからBへ、aからbへと加速され、逆に、流線1に沿って流れる水は、CからDへ、Cからdへと減速されている。その結果、流線3に沿って流れる水の流速は、流線1のそれより速く流れることになる。上図は、そのことを、つまり流線が底泥から離れるにつれて流速が速くなるのは、水の回転に起因することを表わしたものである。
 流速の変化に限ちない。境界層の拡散促進作用も水の回転で説明することができる。水が回転していると、Bとbの所の酸素はCとcへと移動し、DとdのそれはAとaへと移動するが、境界層の内部では、こうした現象が全ての空間で生じているのである。
 また仮りに、底泥と流線1に挟まれた部分の水が回転していないとすると、流線1の所の酸素は下の底泥に移動しない。したがって、流線1の下側の水は、底泥に酸素を奪われて無酸素状態に陥り、底泥は無酸素水の層で覆い尽くされてしまう。そのため、いくら水に酸素を吹き込んでも、この無酸素水の層を排除しないと、底泥に酸素は供給されない。
 バイオファンは、底泥を覆い尽くした無酸素水の層を、ローテーション効果で連続的に排除して、弛まず、底泥に酸素を供給することのできる、唯一無二の流体機械である。