バイオファンが引き起こす流れの理論
池・湖沼浄化方程式
農業協同組合と育苗用地等管理組合のご協力を得て、秋田の大潟村にある南の池で、水質浄化実証試験を実施した。面積が4.2ha、平均水深は6.2mで、多量の塩分を含んだ底層水が、何年も水底に滞留し続けて腐敗した池であった。
実験は、この池の生態系の蘇生と農業用水の確保を目的としたもので、1308日にも及ぶ大実験であった。この実験の期間、南の池から排除された塩分量は380トンであった。68%の塩分が排出された計算である。これは、汚染物質もこの割合で池から排出されて、その分、水質も良くなったことを意味するものである。これは無視できないと考えて、その原因を南の池に降った雨量に求めた。秋田県の年間雨量は1,746mmで、これに池の面積42,000m²を掛けた、73,000m³もの雨量が、年々南の池に供給きれていたことになる。この雨量と、活性化された南の池の浄化作用で、年々改善されていく水質のデータを解析して生れたのが"池・湖沼浄化方程式"である。
《汚染物に関する除去係数κについて》
κ値は池の状態、つまり、ヘドロの堆積量や水底の腐敗の度合いで変わり、地域の気象条件などでも変化する。また、κ値は、COD、T-N、T-Pなどの汚染物それぞれについても異なっているのは当然である。たとえば、塩分に関するκ値はゼロで、気象条件や池の状態には全く影響されることは無い。
このように、汚染物それぞれのκ値は、様々な条件で多種多様に変化するものである。気象条件や池の状態でどのように変化するか、その傾向を知るには、多くのデータの収集を待たねばならない。これは今後の宿題である。
CODのκ値についは事例がある。CODには水生生物や農作物に有害なものと無害なものとがある。前者は、酸欠で腐敗した底泥が生産するCODで、これは、バイオファンで底泥に酸素を供給することで、簡単に除去できる。
大部分の池の底質は腐敗気味で、有害なものと無害なCODが、およそ半々の割合で混入している。そのため、底質が腐敗して、アオコや悪臭が発生している池に、バイオファンを浮かべてひと月もすると、悪臭がなくなって、CODが半分に低下するのが一般である。こうしたこれまでの事例によると、底質の腐敗の度合いで、CODのκ値に大きな差異が生じることが実測されている。
たとえば、秋田県大潟村と群馬県館林市におけるκ値は下記のようであった。
秋田県大潟村の南の池 ⇒ 3.8×10-8
群馬県館林市の古城沼 ⇒ 2.0×10-8
このκ値の差異は、水底の腐敗の度合いによるものである。南の池は平均水深が6.2mで、この深い水底に、高濃度の塩分を含んだ水が、永い年月にわたって滞留して腐敗が進んでいた。これに対して、古城沼のそれは平均水深が1.5mで、腐敗が少なかった。この両者の底泥の腐敗の違いが、κ値の差異として現われたものである。
この意味からして、"CODのκ値は底質の腐敗の尺度である"と云える。
[池・湖沼浄化方程式]
ただし
- t;経過日数 [日]
- C;t[日]経過後の汚染物質濃度 [ppm]
- Co;t = 0[日]時点にお付る汚染物質濃度 [ppm]
- Ci;t日間で流入した水の汚染物質濃度の平均値 [ppm]
- Q;1日で生産される汚染物質の単位面積あたりの内部生産量 [g/m²日]
- hr;t日間で降った雨の降雨量 [m]
- hv;t日間で気化した水の気化量 [m]
- m;t日間で外部から流入した水量 [m³]
- κ;汚染物質に関する単位面積あたりの除去係数 [1/m²]
- H;池・湖沼・入り海の平均水深 [m]
- So;池・湖沼・入り海の水面の面積 [m²]
- S;腐敗した水底の面積 [m²]
- M;バイオファンの1日あたりの耕水量
- ・25W;2.2×104[m³/日]
- ・60W;5.3×104[m³/日]
- ・90W;8.2×104[m³/日]
- ・400W;4.1×105[m³/日]